こっちむいて

さよならだけを伝えるつもりがありがとうと言う

つぶれる

自分が潰れてしまいそうな時、必ずと言っていいほどネイルを塗り直す。少し形の悪い手の爪、マメや乾燥でボロボロになった足の先。色は大抵は赤。真赤。

本来肌色の部分に真赤という色を乗せる時、とても緊張する。派手な色だから特に目立つし、失敗するとめんどくさい。だけど、綺麗に色付けばとても嬉しいし、強くなれた気がする。

先日、あるバンドのライブに行った。最後に行ったのは1年前で、前回と同じ友達と一緒に行った。すごく楽しかったんだけど、ひとつ違和感が残っている。それは、とある曲で自分が泣かなくなっていたこと。去年は今までのこと、好きな人のこと、これからのこと、なんていうどうしようもないことを考えながら聴いて、ずっと泣いていた。苦しかった。だけど、今はもう涙も鼻水も発作もない。本来はそれが当たり前で普通なのに、なぜかとても物足りなく感じてしまっている。

そして、このバンドの曲を聴くたびに、いつも顔の見えない誰かのことを思い出す。きっと大事な人なんだけれど、顔が見えない、思い出せない、掴めそうで掴めない。確かなことといえば、その大事な人は今の彼ではないし、今まで好きだった人の顔とも違う。ああ、この気持ち、誰に持っていた思いだったんだっけ、なんて考えても答えは見つけられなくて。君は、誰なんだろうね。

このことは自分でも本当によくわからなくて、どう対処したらいいのかさっぱりで困っている。あら〜、そんな経験あったわねえ、なんて方いたらぜひ、わたしにご指導ください。

とまあ、「真赤」がひとつのキーワードのバンド。真赤な爪をしていたら少し強くなれそうで、きっと大事な人の顔も見えてくるんじゃないかって思っている。だからわたしは今日も爪の先を真赤に塗る。負けそうになった時、強い女の子でいることを諦めそうになった時、先端の赤を見て気を入れ直す。何かに追われていて、今にも潰れてしまいそうな自分をギリギリでも保つためにも、守ってくれる真赤を身に纏う。そうやって、少しずつ、大人になっていこうと思う。

周囲に敏感で、毎日意思を持って生き抜ける人になりたいです。

 

「たぶん恋じゃなかったんですね」

「きっと、恋と呼べるものじゃなかった」