こっちむいて

さよならだけを伝えるつもりがありがとうと言う

今を大好きになる

半年以上ぶりに書く。書かなかった間に、また自分の生活は大きく変わっていた。

何が大きいかというと、1年半ぶりに恋人ができた。別に恋人が欲しいわけでもなかったけれど、恋人のことを初めて見た4月の入学式の日、すでにもう、なんとなく大好きだった。顔が大好きだし、なんかちょっと変な人っぽいな〜みたいなのも好きだった。それだけならまだしも、元恋人や好きだった人たちと一部が共通している名前だったので、あ〜〜〜、やっぱりね、という感想すら抱いていた。名前のこともあって、正直、この人となんかあるかもしれないな、とは思っていた。それからちょうど半年で付き合うことになった。これを書いている今は付き合って半年が過ぎた頃。顔が好きで、雰囲気もなんとなく好きで、でも付き合っちゃうと面倒だからたま〜にお話したいし適度に仲良くできたらいいな、くらいに思っていた人と付き合っているなんて不思議だ。しかも、今回は付き合う前に手を出されることもなくて、ちゃんと3回デートしたし、その日にセックスしたりもしなかった。初めて、好きになった人とまともな始まり方で交際している、と自分でも驚きだったし、周囲の人間にも驚かれていた。前回書いた心の処女をやっと殺せた。でもいざその時が来てみれば、殺せたというよりも非処女になった!くらいの感覚かもしれない。あんまり外でデートしたことがないから外でデートしたい、という私の願望も聞いてくれるのが嬉しい。

10月の末に家族が札幌にきた。ちょっとピリピリしていたこととか、父親への感情に気がついてしまったこととか、そんなのが積み重なって、家族と一緒にいることが辛かったとき。どう接したらいいかわからなくて、父母に対して優しくしたいのに、優しくすると疲れちゃってもう何もできなくなってしまって、ぐずぐずになっている私に、恋人は、大丈夫だよと言った。「ぼくは、あなたの家のこととか抱えているものを全部はわかってあげられないけれど、わかりたいと思ってるよ。ぼくがいるから、大丈夫。」と。この言葉が、たまらなく嬉しかった。この言葉で、あ、私、この人となら大丈夫かもしれない、と思った。極端にいうと、この人となら結婚できるかも、と思った。付き合ってすぐの話だけど、ずっとこの人と一緒にいる、ということがちょっと想像できた。

相手を大事にしたいし、結婚したいし、隠し事をしたくないから、男遊びみたいなことも全くしなくなった。元恋人と付き合っている時は何回も浮気をしていたし、あわよくば、みたいなこともよくあった。でも、恋人と付き合い始めてから、その感情は全くなくなった。すごく満たされている。私のことだけ見ていてくれるし、嫌なことはしない。ちょっと意味わかんないこともあるけど、ちゃんと話し合いができる。むしろ、私の方が怒りすぎてしまうから反省している。

そんな日々を昨年10月から過ごしているのだが、年の明けた2月には元恋人と再会した。隠し事をしたくないと書いておきながらなんなんだ?という感じだが、これは恋人には言っていない。言えなかった。嫌がることはしたくない、から隠す、というのも失礼な話だとは思っている。でもきっとまだ私が独り身だったら、元恋人とは会えなかったと思う。元恋人は、同じサークルの、唯一のパート同期だった。最初は5人いた同期は、最後は私と彼の2人になった。1年生の秋からセフレみたいなものだったから、お互いがお互いの抑制になって、最後まで生き延びていたのだと思う。付き合っていても別れてからも、なんだあのクズ男は!という感覚なのだが、新しい恋人と付き合い始めてから、あの元恋人への感情も少しずつ変わってきた。まず、もう関わらなくていいや、と思っていたけれど、だんだんもう一度会ってきちんと話がしたい、と思えるようになった。3年間のサークルを無事引退まで続けられたのは、抑制し合っていたからだけれど、やはり元恋人のおかげだったと思う。そして、お互いにひとりしかいない同期だし、3年間ほぼ毎日顔を合わせていたのにもう会えなくなる、というのが勝手ながら寂しかった。大学の4年間で、一番顔を合わせて長い時間を一緒に過ごしていたのは、元恋人だったと思う。そこに私の存在していた証みたいなのがあると思ったし、全部触れられない幻みたいな時間に変わってしまうのは悲しかった。なので、2月の帰省の、札幌に戻る前日、元恋人と会う約束を取り付けたのだった。つくづく自分勝手だなと思う。

恋人には、元恋人と会うとは言わずに、和解できずに離れてしまった同期と会うとだけ言った。ずるいとは思っている。この日の待ち合わせは渋谷の駅前にした。本当は新宿の方が良かったんだけれども、私も元恋人も新宿が好きだったし、外で会う時は大抵新宿だったから、なんか思い出しちゃって嫌だなと思っての渋谷。それに、元恋人から卒業するならやっぱり渋谷かなって(マイヘアの受け売り)。先に着いてしまったのでずっと倒れそうなくらいに変な汗をかいて待っていたのだが、2年ぶりに会った元恋人は髪がシルバーになっていて、「えっっっっっ!?!?!?ねえどしたのそれ!?!?!?」という驚きでドキドキなんてどっかいっちゃった。面白かったなあ。就職する前に染めたくてさー、と、語尾を伸ばして話す元恋人があまりに懐かしくて、ああ、そういえばこの人って本当は結構のんびりした人だったっけな、と思い出したり。慣れない渋谷なので、適当な地下でクリームソーダを飲む。紫のクリームソーダを選ぶ私に、「あなた本当に変わらないね」と笑っている姿に、いろいろ蘇ってどきっとしてしまった。

この日、私が一番伝えたかったのは、「ごめんね」だった。私の都合で振り回してしまったこともあるし、最後なんて一方的に切ってしまったし、そういう全部のことを、自己満足だったとしても、謝りたかった。なんて言ってくれたのかもう忘れちゃったけど、むしろ俺の方が、みたいな感じだった気がする。指輪のこととか、結局れいちゃんが好きな話とか、もう正直てめえいい加減にしろよ、と思わなくはなかったけど、でももうこの人って私の恋人じゃないんだよなって、いい意味でも悪い意味でも思った。ずっとあなたと仲良しのれいちゃんのことが嫌で、そのことで何回もけんかして泣いてきたのにね、結局れいちゃんなんだね、もういいよ、そんなことずっとわかってたよってね。別れたのにまたフラれたみたいな気分になっちゃって笑えた。でもさ、ばかだからやっぱり元恋人のことが今でもちょっと大切なんだなって気づいてしまって、あーあ、ほんと嫌だなって思った。そんなこと気づいたところで誰も幸せになれないのにね。それでもまた会えなくなっちゃうのが嫌で、伊豆で撮った写ルンですを札幌で一緒に現像する約束までしちゃったし、また会ってくれる?とか聞いちゃった。本当ばか。そんな話をして、帰り際に「聞き忘れたんだけどさ、今の彼氏の性癖何?」って聞いてきたのが、すごく最低ですごく好きな元恋人だった。嫌すぎるね。渋谷駅で、元恋人はサークルの後輩と飲みにいったし、私はそのまま祖母の家に帰った。帰り際も、「じゃまたね、いってらっしゃい」とか言っちゃって反省。まだ好きなのかも、なんてね。

そんなこんなで、とりあえず元恋人と和解することに成功した。2年もかけちゃった。でも、和解したからすごく心は軽くなったし、やっぱり前を向けた気がする。会ってよかったなと思った。とりあえずこの半年間の私生活はこんなもんかしら。誰も見てないと思って好き勝手に書いているのだけど、見返してみると結構忘れていたことが多くて、ああ、私そんな風に思ってたんだ、と面白くなる。やっぱり書くっていいわね。

 

「れいちゃんと付き合えるといいね。でもね、他のどんな女でもいいけど、れいちゃんとだけは付き合ってほしくないんだよね。だから、やっぱりれいちゃんとはうまくいかないといいねって、そう願ってるね。」